キャピタリストナビ > コラム・特集 > キャピタリストのための著作権講座(IT著作権.com) > 【職務著作[2]】雇用契約を結んでいないスタッフが描いたイラストの著作権は?

【職務著作[2]】雇用契約を結んでいないスタッフが描いたイラストの著作権は?

『職務著作 ~著作権は個人と会社、どちらに帰属するのか~』では、職務著作の基本について解説しました。

その中で、こんなことを書きました。

しかし、各種コンテンツやソフトウェアの制作・開発現場では,請負業務や派遣労働であったり、ノマドワーカー等会社と直接の雇用関係がなかったり、様々な業務形態の方が混在していることも多いのではないでしょうか。

このような場合にも、著作権は会社のものになるのでしょうか。 会社のものになるとして、委託会社、受託会社、元請け、孫請けetc…、様々な会社が関与する中で、どの会社のものになるのでしょうか。 この点に関しては、有名な判例がありますので、また別の機会にお話したいと思います。

…というわけで、今回は、実際に裁判になった事件のお話をします。

会社に雇用されていないと職務著作は成立しない??

RGBアドベンチャー事件 最高裁判決(最高裁15.4.11判決)

中国国籍のデザイナーTさんは、日本のアニメーション製作技術を習得するため、日本に3回にわたり来日しました。

Tさんは、来日直後から、日本にあるアニメ等の企画・撮影を行う「Aプロダクション製作スタジオ」の従業員住宅に賄い付きの住み込みで居住し、A社の指示に従って、A社のオフィス内でAが企画したアニメ作品等のキャラクターデザインの原画の作成等を行い、A社から原画作成等の対価として毎月お給料をもらっていました。

ところが、Tさん、3回の来日のうち2回は観光ビザによる来日で、残り1回のみが就労ビザでの来日だったうえ、TさんとA社との間では、明確な雇用契約は交わされていませんでした。

A社は、Tさんが作成した図画を使用して「RGBアドベンチャー」を製作し、これをテーマパーク「ナムコ・ワンダーエッグ2」の体感シュミレーションランド「ミラクルツアーズ」のソフトとして上映しました。しかし、「RGBアドベンチャー」には、Tさんの氏名が著作者として表示されていませんでした。Tさんは、A社に対し、著作権および著作者人格権に基づいて、「RGBアドベンチャー」の頒布等の差し止めと損害賠償を求めました。A社は、Tさんが作成した図画について、職務著作として著作者はA社である、として争いました。

最高裁は、

「法人等と雇用関係にある者がこれに当たることは明らかであるが、雇用関係の存否が争われた場合には、同項の『法人等の業務に従事する者』に当たるか否かは、法人等と著作物を作成した者との関係を実質的にみたときに、法人等の指揮監督下において労務を提供するという実態にあり、法人等がその者に対して支払う金銭が労務提供の対価であると評価できるかどうかを、業務態様、指揮監督の有無、対価の額及び支払方法等に関する具体的事情を総合的に考慮して、判断すべきものと解するのが相当である。」とした上で、原判決が「指揮監督をしていたかどうかを確定することなく、直ちに3回目の来日前における雇用関係の存在を否定した」ことは違法であるとして、破棄差戻しました。

そして、差戻後の高裁は、Tさんの請求を棄却しました。

長くなりましたが、つまり、最高裁は、明確な雇用契約がない場合であっても、職務著作の成立を認めることを示したのです。その判断要素として、指揮監督関係の有無、対価の額やそれが労務提供の対価といえるか、等が上げられています。

(ただし、これはあくまで職務著作についての一般論ではなく、「雇用関係の存否が争われた場合」の判断である、との指摘はされています。)

外部委託の場合は?

外部委託の場合、通常は、委託元注文者と委託先との間に指揮監督関係は発生しませんので、職務著作は成立しません。しかし、著作物の制作を外部に委託する場合でも、職務著作の要件を満たす場合には、職務著作が成立する場合があります。

SMAP大研究事件 (東京地裁H10.10.29判決)

出版社X社は、アイドルグループ「SMAP」メンバーに対するインタビュー記事を掲載した雑誌を発行しましたが、Y社が、X社の記事と類似する記事を掲載した書籍を出版したため、X社はY社を提訴しました。

この中で、インタビュー記事の一部が、フリーライターに外部委託して執筆されたものであったことから、インタビュー記事の著作権がX社に認められるかが問題になりました。X社に著作権が認められないのであれば、いくらX社の本の内容を模倣されても、X社はY者に対し差止めも損害賠償請求もできないことになってしまうのです。

結論として、裁判所は、雇用関係にたたないフリーライターが執筆した記事であっても、職務著作が成立するとして、X社の著作権を認めました。

 

派遣従業員の場合は?

派遣従業員の場合、雇用関係は派遣元との間にありますが、具体的な指揮命令は、派遣先から行われるのが通常です。従って、著作権法との関係では、派遣従業員は「派遣先の職務に従事する者」ということになります。従って、派遣従業員が上司の命令を受けて著作物を作成した場合、その著作権は派遣先に帰属することになります。

雇用契約がない場合、外部委託の場合、派遣従業員の場合を見てきましたが、これらの場合も、著作権の帰属についての契約が結ばれていれば、その内容どおりに著作権が帰属することになります。実際、外部委託の場合には、契約条項に著作権に関する条項が含まれていることが多いです。

しかし、雇用や派遣の場合にも、業務開始前から著作権に関する取り決めをしておくことが、トラブル回避につながるのかもしれません。

※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。

 


2013年12月16日 10:21, 投稿者 キャピタリストナビ運営事務局

カテゴリ: キャピタリストのための著作権講座(IT著作権.com), キャピタリストナビ 記事一覧(ベンチャーキャピタル), コラム・特集