発注するとき、下請法は守ってますか?

1.下請法ってなんであるの?

そもそも下請取引においては、親事業者の下請事業者に対する発注が口頭でされる、取引条件を事前に明記しないなどによって、親事業者が一方的に支払いを遅延させたり、事後的に不利な条件を下請事業者に通告するなど、親事業者が優位な立場を利用して不公正な取引を行われていました。

 

そして、この実態を是正すべく昭和31年に立法化された法律が、下請法(正式名称:下請代金支払遅延等防止法)です。

 

2.どんな取引が下請法の対象になるの?

下請法の対象となる取引か否かは、

(1)どのような種類の取引か(取引内容に着目)

(2)どのような主体による取引か(取引当事者に注目)

により判断されます。

(1)どのような種類の取引か

大きく分けて、

(1) 物品の製造委託

(2) 修理委託

(3) 情報成果物作成委託

(4) 役務提供委託

に関する取引が、下請法の対象となります。

 

これらは、親事業者の優越的地位の濫用が行われる可能性の高い取引として規制対象とされています。

 

(3)は少し分かりにくいかも知れませんが、具体的にいえば、アプリ提供会社がアプリコンテンツやイラストデザインの制作業務を他の事業者に委託する場合、広告会社が広告主から請け負ったTVCM制作業務を他の事業者に委託する場合などはこれに該当します。

(2)どのような者による取引か

以下の取引内容に従い、

親事業者と下請事業者の資本金に従って対象が判断されます。

 ・物品の製造委託・修理委託等

  情報成果物作成委託・役務提供委託

  (プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に係るもの)

親事業者

下請事業者

資本金3億円超

資本金3億円以下の法人又は個人

資本金1000万円超3億円以下

資本金1000万円以下の法人又は個人

 

 ・情報成果物作成委託・役務提供委託

  (プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に係るものを除く)

親事業者

下請事業者

資本金5000万円超

資本金5000万円以下の法人又は個人

資本金1000万円超5000万円以下

資本金1000万円以下の法人又は個人

 

 

3.下請法の対象だと何しなきゃいけないの?

大きく分けて以下の4つの遵守義務が課されます。

 

(1)発注書面の交付義務

発注内容や支払条件が不明確なまま発注が行われると、後日内容を巡って争いになることが多く、そのために下請事業者に不利益が及ぶことを未然に防止する必要があります。

 

そこで、下請法では、親事業者に対し、発注段階で書面に取引条件等を明記しておく義務を定めています。

具体的には、当事者の名称、委託した日、給付の内容、給付の受領日などを、発注書面に記載する必要があります。

 

(2)支払期日を定める義務

親事業者によって下請代金の支払期日を不当に遅く設定することを未然に防止するため、下請代金の支払期日は、下請事業者の給付の受領後60日以内に設定しなければなりません。

 

重要なのは、「給付の受領後60日以内」であり、検収完了後60日以内ではありませんので、給付の検収中であることを理由に支払いを延期することは出来ません。

この点にはご注意ください。

 

(3)取引記録の作成・保存義務

下請法では、親事業者が取引に関し常に注意を払うようにするとともに、また、公正取引委員会による検査の迅速さを確保するために、親事業者が下請取引に係る書類を2年間作成・保存する義務が課せられています。

 

この書面は、(1)で記載した発注段階の書面と記載する事項が重なる部分もありますが、給付の受領日に加え、実際に受領した日や給付の内容を検査した場合には検査完了日を記載するなど、(1)記載の発注段階の書面とは別途作成する必要がある場合が多いです。

 

(4)遅延利息の支払義務

親事業者が下請代金の支払遅延があった場合に下請事業者の利益を確保するために、下請代金に係る遅延利息は年利14. 6%と定められています。

 

4.親事業者がしてはいけないことは?

下請法は、親事業者が下請事業者に対して禁止している行為として11の違反行為の類型を定めています。その一部をご紹介させて頂きます。

 

・受領拒否

下請事業者からすれば、親事業者による受領がなければ下請代金の支払請求ができないため、かかる事態を防止すべく、親事業者による受領を義務付けております。

ただし、委託内容と全く異なる内容が給付された場合など、下請事業者の責に帰すべき事由がある場合には、受領拒否も可能となります。

 

・下請代金の減額

下請事業者は、交渉上の立場がどうしても弱いことが多いため、発注後に下請代金の減額が命じられたとしても、有効な対抗手段がありません。

そこで、これを未然に防止すべく、親事業者による下請代金の減額は禁止されています。

ただし、この場合も下請事業者の給付に明らかに瑕疵がある場合など下請事業者の責に帰すべき事由がある場合には減額が可能となります。

 

・不当返品

下請事業者は、親事業者からの発注の仕様に沿って給付していますので、返品されたものを転売することは困難です。

そこで、この不利益を防止すべく、下請法では給付受領後の返品を禁止しています。

この場合も、下請事業者の責に帰すべき事由がある場合には返品が可能です。

 

・不当な経済上の利益の提供要請

親事業者が、その優越的立場を利用して、当初の発注になかった労務を提供させる他、協賛金の名目により金銭などを要求することを禁止しています。

金銭の要求のみならず、発注内容に明記のない知的財産権の無償譲渡の要求などもこれに該当しますので、十分にご注意ください。

 

5.下請法に違反するとどうなるの?

下請法違反の発覚は、下請事業者からの申立てや公正取引委員会が行う書面調査です。

これにより下請法違反の疑いがある場合、公正取引委員会は、親事業者に対する個別の調査及び検査を実施することになります。

 

その結果、公正取引員会が親事業者の違反を認めた場合には、親事業者に対し、(1)改善を求める勧告を行った上、公表する措置、(2)違反行為の概要等を記載した書面を交付し、指導を行う措置を行う他、最高50万円の罰金が科せられることとなります。

 

公正取引委員会が公表する平成26年6月4日付

「平成25年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組」によれば、勧告件数は計10件(前年度:16件)、指導件数は過去最多の4,949件(前年度:4,550件)となっており、指導件数が著しく増加しております。

 

以上の様に、下請事業者との取引には、様々な義務や禁止事項があります。

もっと詳しく知りたいという皆様においては、公正取引委員会運営のウェブサイトを参考にするほか、具体的な自社への助言などが欲しいというご要望などがございましたら、

当事務所までお気軽にご相談ください。

 

【執筆者】 弁護士 橘 大地

※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。


2014年11月13日 10:00,

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