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漫画著作権物語1  ~漫画はどこまで保護される??~

【読者サイド】

・  同人誌って法的に大丈夫なの?

・  自炊代行サービス業者は使ってもいいよね?

・  漫画のデータもらうのは、友達周りだけなら大丈夫?

・  LINE漫画のデータは、端末を変えても利用できるよね?

・  違法なことしてもどうせ請求はされないんでしょ?

 

【提供者サイド】

・  海賊版を撲滅したい!

・  自分が描いた漫画は、勝手に出版してもいいよね?

・  原作者と喧嘩したけど、絵は自由に使えるはず!

・  勝手にアップされた漫画を削除したい!

 

…などなど。漫画に関する法的問題は、私たちの周りに沢山あります。

そしてこのようなことをトピックとして掲載する記事も多く存在します。

しかしそれらのぶつ切りの知識では、新たな法的問題にぶつかった時に適切な処理が出来ません。そこで、漫画に関してのみ、読者の皆様が適切な処理を出来るように、漫画著作権の体系を「漫画家を目指す少年達」をモデルに構築することが本連載の目的です。

1   漫画の著作物性

ある少年Nが、原作者のDと協力して一つの漫画を作成する場面を想像して下さい。

この少年達は、自らの才能と技術と熱意をかけて一つの作品を作り上げて行きます。そのようにして完成した作品は、どこまで著作物として著作権法の保護の対象となるのでしょうか。

著作権法2条1項1号は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています。このうち漫画で問題になるのは、(1)創作性があるか、(2)表現にあたるか、という二点です。作成された漫画がこの定義にあたれば、著作権法の保護を受けることになります。

さて、それでは具体的に見て行きましょう。

2   漫画全体

漫画は、それがある他の漫画を完全に模倣したものであるなど特殊な場合を除いては、著作権法による保護を受けます。

以下では、一つの漫画を作成する上で、著作権の保護が及びうる限界事例を見て行きます。

3   技法

今回のND漫画は、吹き出しで視線誘導を行ったり、コマ割りで当事者の感情を分かりやすく表現したりする等、様々な漫画技法が用いられています。

このような、技法にも著作権の保護が及ぶのでしょうか?

答えは、否です。このような漫画技法は、アイディア[※1]に止まり(2)表現に当たらないため著作権法による保護は与えられません。

吹き出しやコマ割りは原稿の上に表現されているではないか?と疑問を持った方もいるかもしれません。たしかにそのように考えると(2)表現を充たすかもしれません。しかし、今度は(1)創作性が問題になります。少年マガジン・少年サンデーが1959年に刊行されて以来、日本の漫画は我々の日常の中に当たり前にあるものになりました。このような状況の中、上記の吹き出しやコマ割りは、ありふれた表現として、(1)創作性が認められることはまずないといえます。

4   タイトル

NとDは、今回の漫画のタイトルを一生懸命考えて、「漫画太郎」にしました。このようなタイトルそれ自体にも、著作権の保護が及ぶのでしょうか?

答えは、否です。タイトルは、ありふれた表現であることが多く、(1)創作性が認められません(今回は「漫画」とよくある名前である「太郎」を組み合わせたに過ぎない)。もっとも、日本は古来より、短歌(31字)、俳句(17字)と短い文字の中に創作性を持たせることに富んだ文化があり、タイトルそれ自体に創作性が認められる可能性は0ではありません。皆様も漫画のタイトルをつける際には、創作性の認められるタイトルをつけてみてはいかがでしょうか?

ちなみに、私が知っている中でもっとも長い漫画のタイトルは、「私がモテないのはどう考えてもお前等が悪い!」(27字)です。他にもあれば教えて下さい。

5   キャラクター

ND漫画には、「毎日麦わら帽子をかぶり、身体がゴムのように伸びる「海賊王に俺はなる!」が口癖のキャラクター」が出てきます。このようなキャラクターにも著作権法の保護が及ぶのでしょうか?

答えは、否です。キャラクターというのは、漫画の中に表現された具体的な人物ではなく、それを抽象化した人格といえる存在であり、(2)表現にあたらないと考えられています(最高裁判例平成9年7月17日参照)。

ここは少し分かりにくいのですが、「毎日麦わら帽子をかぶり、身体がゴムのように伸びる「海賊王に俺はなる!」が口癖のキャラクター」が原稿の中に表現されている場合には、その表現には著作権法の保護が及びます。一方、「毎日麦わら帽子をかぶり、身体がゴムのように伸びる「海賊王に俺はなる!」が口癖のキャラクター」という概念については著作権法の保護が及ばないのです。上記キャラクターから、日本国民の誰もがある海賊団の船長を想像したとしても、その想像は著作権法により保護されないということです。

6   ストーリー

ND漫画は、「二人の少年が、漫画を描くことを決意し、才能と技術と熱意をかけて最高の一冊を作る」という自分たちの事を表したようなストーリーです。このストーリーに著作権法の保護が及ぶのでしょうか?

答えは、否です。この段階では未だアイディアにすぎず、ND漫画の表現上の創作性を基礎付けるものではないと考えられます。
もっとも、「主人公は、何事にもやる気のない少年である。そんな少年に、ある日、頭のいい同級生から漫画の作画の依頼がくる。あまり乗り気ではなかった少年であったが、ふとしたきっかけで小学生時代から好きだった同級生に、「自分たちの書いた漫画がアニメ化され、その声優を貴方がすることになったら結婚しよう」という約束をし、それを叶えるために奮闘する。その結果、共に漫画家として売れるために頑張る仲間もでき、一緒に成長し、自分たちの漫画をアニメにしていく」という具体的なストーリーであれば、著作権法の保護が及ぶことになります。

7   台詞

ND漫画には、「努力!友情!!勝利!!!」という台詞が数多く登場します。このような台詞にも著作権法の保護が及ぶのでしょうか?

答えは、否です。タイトルの場合でもありましたが、この程度ではありふれた表現であり、(1)創作性を充たしません。
もっとも、「天才とは!! 無限の肯定!! “ラッキーパンチを千回決めるすげー自分”の直感を!! ありえねーと否定せずそれもアリだと千回肯定する者!! 直感を肯定する内神業を千回実現するすげー自分!! それが天才!! 技なんかオマケ!!おれすげーの瞬間を!! すげーおれの存在を!! 肯定し肯定し肯定に肯定をかぶせろ!! 考えるな!! 直感し続け 肯定し続け 確定し続けろ!!」(水上悟志『惑星のさみだれ8巻』少年画報社、2009年、75−77頁)まで行くと、著作権法の保護が及ぶことになると思います。

8   まとめと次回予告

どうだったでしょうか。漫画の中で著作権法の保護が及ぶ範囲とそうではない範囲がおぼろげながらみえてきたでしょうか。
著作権法の保護が及ぶ漫画(著作物である漫画)は、著作権法により様々な権利が付与されます。次回からは、このような権利と抵触する可能性のある様々な事例を紹介して行きます。

 

⇒漫画著作権物語2~漫画家と出版社との出会い(仮)~


[※1] 著作権法では、アイディアはそれ自体公共のものであって、誰でも自由に利用できるという基本的な考え方に立ちます(アイディア自由の原則)。

 

【執筆者】弁護士 山田邦明

※本記事はIT著作権.comからの転載記事です。


2014年10月23日 10:00, 投稿者 tatsumi-admin

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